『し』 心配 しんぱい  失踪日記

これはわたしの「失踪日記」

以前、わたしは数日間失踪した。

というと、いかにも何かがあったと思われるかもしれないがそうではない。
わたしはなにひとつ変りの無い生活をしていたのだが、
ある人物が、わたしが失踪してしまったのではないかと心配してくれていた。

仮にもふつうに社会生活を営んでいるので、この年齢になってまで
失踪したのかと心配されるとは思わなかった。

ある人とは、当時、3年ほど前から仕事上の付き合いのある、『彼』

彼とは年齢が近いこともあり、お互い仕事以外の話はほとんどしないが
それでも時々僅かなプライベートな話をする程度の間柄。

大概の事は電話での打ち合わせで済むが、まれに顔を合わせる必要性が生じる。
そのときは彼の職場がわたしの自宅に極めて近いので、
わたしから彼の職場に足を運ぶことにしている。
彼もわたしの自宅は知っているので、必要な資料をポストに届けてくれるが、
顔を合わせて受け渡しをする事はない。

そんな、あくまでも仕事上のパートナーとして、それでも3年間の積み重ねがある
そんな関係。

ただひとつ、いまどき珍しいかもしれないが、
携帯の番号を交換することが無かった。

別に隠す必要は無かったのだが、わたしの自宅の番号と、
彼の職場の番号だけで
事足りていたのだ。


水曜日
彼といつもどおりの打ち合わせを電話で済ませ、その際、ちょっとした
トラブルがあるかもしれないことを伝えておいた。
仕事上には差しさわりが無いこともあわせて伝えた。

木曜日
トラブルが現実のものとなったので、彼に連絡を取ったがあいにく留守だったので、
仕事は予定どうりだから安心して欲しい旨言伝を頼んだ。

金、土、日、月とトラブルの処理ほかで帰宅が遅くなった。彼からの留守電が
土曜と月曜に入っていたが、携帯の番号を知らなかったので、連絡をする術が無かった。
週末を挟んでもいたし、普段は週一のペースで連絡をとる事も稀だったので
「まあ、いいか」
と言う気持ちも働いた。

火曜日
彼からも電話がなく、わたしも仕事上の必要性が無かったので連絡をとらなかった。
余裕も無かったのだが。

そして、ちょうど1週間後の水曜日
電話から聞こえた彼の声は、安堵に満ちていた。


「連絡が取れないので心配しました。
                   声が聞けて ほんとに ほんとによかった。」


 
言葉にはしなかったが、トラブルでわたしが失踪でもしてしまったのではないかと
本当に心配していてくれたらしい。
こちらにとっては予期していたことだったのでそれほどショックは受けなかった。
だが、内容までは知らなかった彼にはショックだったようだ。

今まで連絡が取れなかったことも確かに無かった。
それが彼を必要以上に不安にさせたのだろう。

共通の知人と連絡を取った際にもわたしのことを尋ねたらしい。
後日、その人からも彼の心配振りを聞かされた。
その人とも、その前後はたまたま連絡を取っていなかったので
彼の不安は解消されなかった。
ただ、わたしのことをよく知っているその人はさして心配もしなかった風で、
彼の様子をわたしに伝えた後
「そんなに心配なら、ウチまで様子を見に行けばいいのにな。近くだろうに」
と付け加えた。



さて、ここまで貴方にはわたしの言いたいことが判っていただけているだろうか


『近く』と言うコトバが表しているのは、わたしと彼とのphysicalな距離
『心配』 『よかった』と言うコトバが表しているのは、わたしと彼とのspiritualな距離


physicalな距離はコトバどおりに≪近い≫
spiritualな距離は果たして≪近い≫と貴方は思うだろうか

『心配』 『ほんとによかった』と言う言葉に嘘はない。
それは実際に聞いたわたしも、知人の話からも判る。
それだけを考えるとspiritualな距離もとても≪近い≫とおもえる。

physicalにも、spiritualにも≪近い≫関係があるとしたら
それはわたしにとって、とてもうれしいことである。

けれど、彼の『心配』はphysicalな距離を埋める事はなかった。
≪近い≫距離の我が家に彼は訪れることは無かったのである。

仕事がら、郵便物が多く、新聞もとっているわたしのポストを覗くだけで、
彼の心配は半減していたはずだ。
ポストを覗けば、少なくともわたしがきちんと毎日帰宅していることだけでも判ったと思う。
そんな簡単なことを、彼はしなかった。


わたしと彼のspiritualな距離が≪近い≫としたらそれはどれくらい≪近い≫のか


そして、わたしはコトバのハザマに陥ってしまう。
≪近い≫と言う大切なコトバの持つほんとうの距離がわからないままに



           
   貴方は大切な人とのspiritualな距離を
                     どんなコトバで測っていますか




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by fusyou-kumahachi | 2006-05-15 03:08 | ututu

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